CDを売るのにあの手この手…握手券だけではない「おまけ付き」CD販売の最新事情

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ラブラドール・レトリバー Type-A(通常盤)(多売特典生写真なし)「CD不況」が騒がれ始めてかなりの年月が経つが、未だにCDシングル市場は盛況とまではいかないものの、それなりの水準で維持している。

ただ、その裏では各メーカー・事務所の涙ぐましい努力があることも事実である。こうした努力がなければ、CDシングル市場は「オワコン」と化してしまっているのもまた事実なのである。「AKB商法」から始まった、CDを売り、チャートの成績を上げるための様々な工夫は、毎年磨きがかかり、様々な方法が編み出されてきた。最新の事情をお伝えしよう。

 

■ 従来の「CD+券」型
 一番分かりやすい、CDに握手券を付ける販売方法は未だに健在である。ただし、AKB48グループ、ハロプロなどの女性アイドルグループだけではなく、今やEXILE系グループ、ビジュアル系バンド、一部のロックバンドもこの方法に手を出しており、音楽業界では当たり前の方法となってしまった。

 CDに「券」を付けて付加価値を与えるこのパターンは、年々多様化している。握手だけでなく、写メ、ハグ、ハイタッチ、サイン・・・など様々な特典が与えられている。さらに、CDを複数種用意し「Aに個別メンバー握手券、Bに写メ券・・・」のように、パッケージごとに特典を変える手法や「10枚買うと握手券1枚」などと複数種購入を強制するパターンが後を絶たない。さらに、抽選で握手等できるメンバーが決まるランダム封入も当たり前と化している。

 今年、この方法に新たな風を吹き込んだ人物がいる。それは声優の竹達彩奈であり、6月に発売された「わんだふるワールド」では特典に「牛丼「アタマの大盛」100円引券」を封入した。さすがに牛丼目当てで竹達彩奈のCDを買う人間は殆どおらず、爆発的な勢いにはならなかったが、新たな視点として注目された。この吉野家効果(?)で、当作品の初動売上は前作から+620枚のアップを記録している。(なお、逆に吉野家にどれほどの効果があったかは不明)

 

■ CD購入前から握手可能な「予約イベント」型
 従来の「CD+券」型は購入日以降に握手等が可能になる仕組みであるが、最近では事前にイベントでCDの予約を受け付け、そのタイミングで握手等のイベントを開催するパターンも増えてきた。

 一部の地下アイドルでは、CDの発売日の数ヶ月前から予約者を対象にして、CDの予約と引き換えに握手できるイベントを実施している。その数ヶ月間で受け付けた予約枚数を全てオリコンデイリーランキングの初日に計上して、初日の売上を高く見せる方法が後を絶たない。

 また、予約したCDが宅配される場合は別だが、店舗引取となっている場合はPOSを通さないとオリコンランキングに反映されないという性質から、予約者に引き取りに来させるための「お渡し会」も行われている。

 

■ CDがおまけになる「チケット+CD」型
 CDと券のどちらがおまけか分からなくなる販売方法も出現した。昨年のEXILE「EXILE PRIDE」など一部の作品では、ライブチケットを買うと必ずCDが付属する販売方法を取った。これにより、ライブの動員分だけCDの売上枚数になり、チャートの成績が大幅に押し上がった。

 前述の「EXILE PRIDE」は、この方法と後述の「MUSIC CARD」型を組み合わせた販売方法で、なんとミリオンセラーを達成。それだけでも多くの賛否両論を呼んだが、この楽曲が昨年の「レコード大賞」を獲得したため、この商法に対する批判は急速に拡大している。そのような事情のためか、この方法でCDを販売するアーティストは、ごく僅かに限られている。

 

■ 安価で多売する「MUSIC CARD」型
 昨年以降に急速に拡大しているのが、紙で出来たカードに楽曲をダウンロードするためのインタフェースを搭載した「MUSIC CARD」を多売する商法である。MUSIC CARDを買うと握手等ができるように特典を設定し、ファンの購入を誘う方法だ。主にEXILE系アーティスト、一部の男性・女性アイドルグループが実施している。最近では、来月にジャニーズのSexy Zoneが新曲でこの方法に手を出すことになり、賛否両論を呼んだ。

 MUSIC CARDは小さなカードの形であり、薄く、かさばらず、安価に製造可能ということで、CDシングルに取って変わり、チャートの売上枚数を積み上げるための方法として確立されている。EXILE系アーティストの場合、メンバーのソロ写真をジャケットにして10種〜30種の販売が当たり前と化している。10種〜30種をまとめ買いした場合には握手等に加えて特典を用意する仕組みも整えられている。

 このMUSIC CARDを使った販売方法に新たな動きがある。今週発売されたV6の最新シングル「Sky’s The Limit」では、CD+DVD盤の他に、CD+DVD+MUSIC CARD盤が用意され、これらが同価格に設定された。後者の場合、MUSIC CARDを実質0円で配っていると言える。このCD+DVD+MUSIC CARD盤が購入された場合、チャートにて2枚分計上される可能性が浮上しており、新たな “売上枚数アップ” の方法として注目されている。現に、V6の今作は前作から大幅に売上枚数を伸ばして注目されている。

 CDを売るための、あの手この手の工夫は後を絶たない。今後も様々な方法が編み出されると見られ、このような工夫がある限り、配信・サブスクリプションがどれだけ魅力的だったとしても、CDシングル市場の縮小ペースは(※枚数ベースでは)緩やかになりそうだ。

 

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