オリコンランキングを通じて「流行曲」の発見が困難になった理由を考える

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昨今のネット上では、オリコンランキングに対する過激な評価が増えてきている。タイトルにもあるように「信用できない」と言われることもしばしばである。
その原因はズバリ「CDシングル市場全体の売上低下」であろう。本記事では、そのメカニズムを追ってみたい。



   音楽業界において、捏造されていない “真のブーム” を見極める5項目の記事で挙げたように、オリコンランキングを見て真に人気のあるアーティストや楽曲を探すことは困難になりつつあるため、結果に違和感を感じる人が増えている。
   言い換えると、オリコン1位のアーティストですら「誰でも知っている」という状况ではなくなり、カラオケでオリコン1位の曲を歌っても誰も知らなかったりするなど、オリコンの結果と現実の流行が乖離する現象が加速している。(なお、これはもう随分前から盛んに言われていることである。)

  この原因は、オリコン上位に上記の記事に挙げた5項目に引っかかる作品が増えていることだけではない。もう一つの原因は「CDシングル市場全体の売上低下」である。

   既に何度も言われている具体的なメカニズムは次のようになる。

CDシングル市場全体の売上が低下し始める。

少ない売上枚数でもオリコン上位にランクインできるようになる。

さらにCDシングル市場全体の売上が低下する。

小規模なクラスタの熱狂的なファンしか買っていない作品であっても、オリコン上位にランクインできるようになる。

ランキングの結果に違和感を感じる人が出てくる。

   「違和感」についてもう少し踏み込んで解説したい。

   大前提は、オリコンランキングを見て真に人気のある楽曲を探している人が多く存在し、そういう人たちから不満が挙がってきているということである。真に人気のある楽曲というのが、流行曲と言われるものだろう。オリコンを手がかりに流行曲を知りたい人と考えている人ほど、現状のランキングに不満を覚えているわけだ。

   ここで、Wikipediaに載っている「流行の展開過程」の定義を引用する。(出典が示されていないが大体合っていると思われる)

流行の展開過程は、それの発生・成長から衰退・消滅までを、いくつかの段階から捉え、分類することができる。

    潜在期:ある様式が生み出され、それがごく限られた人々に試行される時期
    発生期:試行過程を経て、新しい様式の存在が人々に知られ、同調者が現れる時期
    成長期:新しい様式に同調する人々の数が増加し一斉に、普及率が拡大していく時期
    成熟期:普及が最大の水準に達し、その伸びが鈍化していく時期
    衰退期:後発的に採用する人もいるがそれ以上に採用をやめる人の数が増える時期
    消滅期:採用する者が少なくなり、その様式が消滅していく時期

   この定義をもとに考えるのであれば、不満の原因は、かつてのオリコンならば流行の「成長期」「成熟期」にならないとならないとランキングの上位に入れなかったものが、今では「潜在期」「発生期」であっても上位に入れてしまうようになった、ことではないだろうか。
   それとも、今のオリコンを見ても「成長期」「成熟期」のアーティストや作品を発見できなくなった(あるいは、そうだと思っていたけど実際は違ったという例が増えた)、ということではないだろうか。

   では代わりに配信ランキングを見れば流行が追えるかというと、恐らくそれも違うだろう。テレビがオリコンを取り上げるのをやめて、レコチョクのランキング上位の作品を取り上げて煽ったとしたら、それはそれで不満を挙げる人が出てくるだろう。

   ここまで長々と考えてみたが、結局、次のようにしないと上で挙げたような不満は解決できないと思われる。
(1) 全ての媒体の売れ行きをうまくマッシュアップした、市場全体を見渡せるランキングを作る
(2) メディアが示す流行をそのランキング基準へと変える
(3) メーカーがそのランキングの上位入りを目標にした戦略を立てる

   しかし、これらは容易ではないだろう。特に(1)が難しいと思われる。後日時間があれば、容易ではない理由を考察したい。

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音楽業界において、捏造されていない “真のブーム” を見極める5項目
2011年 オリコン年間シングルランキング 42週目時点の暫定順位速報


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6 Responses

  1. はるき より:

    とにかくCD価格を下げろと思うが、秋元さんがほとんどのレコード会社
    おさえちゃってるから無理でしょうね

  2. はむれっと より:

    CDを売りたいと思えば、CDマーケットでどうやったら売れるか計算する。
    配信で曲を売りたいと思えば、どうやったら配信ユーザーに届き売れるかを計算する。
    そもそものターゲットの層がちがうんですよね。
    ユーザーは音楽を買う媒体を選べるようになっています。
    そういうスタイルも「成長期~成熟期」に至っていると言えるでしょう。
    違和感があるのはCDランキングしか見せないメディア(Mステとか)。
    たとえばジョブズ氏死去のときはiPodの発明を
    「音楽の聴き方を変えた」とニュースでも表現しているのに、
    Mステはシングルランキングしか流さない。
    今度の特番もシングルとアルバムの売り上げのみです。
    このやり方は違和感しかない。
    シングルランキングの違和感は、記事の通り、コアな人気だけで1位や2位がとれたりすることでしょう。
    アルバムはファンの数で売り上げが決まったりするものですが、
    最近はシングルも同じようなものになってしまっている感があります。
    (ファンの数+複数種、握手会、etc)
    だったらランキングを分ける必要がないわけで。
    話題になっている曲、つまり新規ファンを取り込んでいるものがわかりやすい構図が
    「シングルチャート」であるべきだと私は思います。
    その点では200円くらいで買える、配信市場のシングルチャートのほうが、
    わかりやすいものであることは言うまでもないでしょう。
    (着うたフルも420円するし、どこまで買われるものか)
    配信も大きくPC、携帯、スマホの3種類に分かれますからねー。
    音楽を扱う形態によって、好まれる購入形態も変わってくるでしょう。
    音楽の売り方がいろいろあるっていうその多様さを、
    いい方向で認めること、流行の指針が流動的な時代になっていることをメディアが認識し、
    そこで「どう売ればいいか」を考えることが妥当なんじゃないでしょうか。

  3. より:

    なるほど。(1)が実現するとよいですね。私的に世界的にみてシングル価格が高すぎるのをなんとかしてほしいです。+DVDじゃ二千円近いですよね。そのお金で安い洋楽輸入盤二枚は買えますし(苦笑)市場縮小で苦しんでしょうが、こんな値段では逆にユーザーが去っていくのでは?結局残るのは購買力のあるマニアの皆さんでランキングに違和感が・・・配信も200円台と割高のせいでイマイチ伸びないのでは?長文失礼しました。

  4. ブームとは より:

    こんばんは。今回も有意義なご提言ありがとうございます。個人的には、オリコンの信頼性が疑問視されるようになった要因には、「買い占め」を売上枚数に反映させるようになった点があると思います。昔の有名な社長さんがご存命の頃は、それを厳禁する事でオリコンの信頼性を高めていました。また売上枚数に反映しない事で限度を超える買い占めも防いでいたわけです。音楽業界においても企業のモラルが重要なのだとつくづく感じています。

  5. muki より:

    音楽配信市場もここ2年ほどは右肩下がりなんですよね
    シングルだけはAKB・嵐の力で市場全体は現状維持出来てますけど、アルバム市場は毎年1割小さくなっている。
    こうなると利益率の高いCDを売りたいのもわかる気がします

  6. 手のひら より:

    人によって、好む音楽ジャンルが異なるほど、好みが細分化された今、一つの楽曲だけに注目が集まるということは有り得ないことなんじゃないかと思います。
    それにそもそも、オリコン1位だから必ず有名じゃなきゃいけないという理由もないと思います。流行歌があるから、良い時代だという考え方が気持ち悪いです。