近年のCD業界では、CDをそのまま売るのではなく、握手券等の特典を付けて販売する方法が後を絶たない。この握手券商法が確立されてからは、1人のユーザが何十枚・何百枚とCDを購入する事例が増え、オリコンの売上枚数上の「大ヒット作品」を生み出してきた。ただし、小規模のコミニュティの中で生み出されたヒットが世間一般のヒットのように扱われることに対し、疑問の声を上げる者も後を絶たない。
そんな売上枚数のアップをさらに強力化する方法として「MUSIC CARD」商法が注目されている。CDシングルと同価格帯で複数枚を販売できるため、CDシングルを売るよりも効率よく、オリコン上の売上枚数を積み上げることができる。この方法を利用すると、ユーザの複数枚購入の敷居を下げ、ミリオンセラー作品を量産できる可能性があることが分かり、先月から大きな注目を集めている。
■ MUSIC CARD1枚を売っても、CD1枚を売っても同じ
オリコンでは、CDシングル1枚を売っても、MUSIC CARD1枚を売っても、同じ「シングル1枚」としてカウントされる。このことは、これまでも複数回説明した内容であるため、本記事では詳細を割愛する。以降の解説は、この内容が前提となる。また、単に「シングル」と表記した場合はCDとMUSIC CARDの両方を含んでいるものとする。
■ CD1枚と同価格で、MUSIC CARDは10枚売れる?
内容にもよるが、CDシングルの価格は1枚1200〜1500円とされる。一方、MUSIC CARDは2曲入りで300円前後のものがあり、1曲あたりの単価は150円前後となる。もし1曲入りのMUSIC CARDが150円で売れるとすれば、同じ価格でもCDシングル1枚に対し、MUSIC CARDは10枚売れることになる。(※)
■ 特典抜きのCD1枚と、特典有のMUSIC CARD10枚セットを天秤に
そこで、アイドルが次のようなリリース形態でシングルを販売したらどうなるだろうか。
CD・・・1500円、特典なし、4曲入り
MUSIC CARD・・・150円、特典なし、表題曲1曲入り
MUSIC CARD (10枚セット)・・・1500円、個別メンバーとの握手券付
注目すべきは、握手券目当てで複数購入する層の購買動向である。もし上記のように販売をしたら、この層に対し、確実に10枚セットを手に取らせることができる。アイドルと握手をしたいファンは、MUSIC CARD (10枚セット) しか選択肢がないためである。これまでのCDシングル1枚+握手券1枚の商法に比べると、売上枚数は10倍となる。実に簡単な仕掛けで、シングルの売上枚数を10倍に増やせるのである。今時点でシングルが100万枚の売上を記録しているAKB48がこの商法を取り入れたらどうなるか、想像すればすぐに分かるだろう。
■ Sexy ZoneがMUSIC CARD商法を展開、Mr.Childrenの「30作連続1位」記録に終止符
今週、上記のように価格までも揃えられていたわけではないが、Sexy Zoneが新曲「君にHITOMEBORE」MUSIC CARD6枚セットの購入者に「ハイタッチ会」に応募できる権利を与えた。このハイタッチ会への当選を目指したファンが6枚セットを次々に購入したと見られる。この商法の結果、「君にHITOMEBORE」はオリコンのシングルデイリーランキングで、初日だけで自己記録を大幅に塗り替える約30万枚の売上枚数を記録した。
同日には、1993年から30作連続1位の記録を続けていたMr.Childrenの最新作「足音 ~Be Strong」が発売されたが、「君にHITOMEBORE」は同作品に25万枚の大差をつける結果を残したため、Mr.Childrenの記録に終止符が打たれることが確実となった。この結果を受け、シングルの売上を簡単に増やせるMUSIC CARD商法への注目度がさらに高まっている。
この商法がメジャー化すれば、今後のシングルランキングではAKB48以外にもミリオンセラー作品が続出する可能性がある。しかし、音楽ファンの間では「本当にそれで良いのか」という声が後を絶たない。
(※) 2015年からは集計対象の商品の最低価格が250円になるようです。
http://www.oricon.co.jp/rank/about/
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