オリコン・リサーチ株式会社は1/28のプレスリリースにて、音楽作品のダウンロードコードが記載された紙媒体「MUSIC CARD」をCDの売上枚数に合算していた従来の集計方法を変更し、合算を取りやめることを発表した。今年の4/6付デイリーランキングから適用される。
■ MUSIC CARDを合算することの何が問題だったのか
以前から指摘されていた問題は「MUSIC CARDによって、オリコンランキング上のCDの売上枚数を簡単に●●倍にできる」ことであった。
現在のオリコンランキングでは、シングルランキングを例にすると、CDシングル1枚を売っても、MUSIC CARD1枚を売っても、同じ「シングル1枚」としてカウントされた。
内容にもよるが、CDシングルの価格は1枚1200〜1500円。一方、MUSIC CARDは2曲入りで300円前後のものがあり、1曲あたりの単価は150円前後となる。もし1曲入りのMUSIC CARDが150円で売れるとすれば、同じ価格でもCDシングル1枚に対し、MUSIC CARDは10枚売れることになる。
近年、この「低価格×複数」の組み合わせによる販売方法と、従来の特典商法と組み合わせて販売する方法が確立されていた。さらに、以下の通り、通常のCDの販売と比較させることによって、意図的に1人のユーザに対して複数枚の販売を誘導する商法が「オリコンハッキング商法」として問題となったのである。
CD・・・1500円、特典なし、4曲入り
MUSIC CARD・・・150円、特典なし、表題曲1曲入り
MUSIC CARD (10枚セット)・・・1500円、個別メンバーとの握手券付
上記のように販売した場合、握手券目当てのユーザは必ず10枚を手に取る。前述の通り、CD1枚もMUSIC CARD1枚も、オリコンの売上枚数は同じ「1枚」であるため、大きく問題視されたのである。
この状況に対し、オリコン側はまず集計対象の最低価格に「税込250円」を設けたが、効果的な対策とは言えないとの指摘が後を絶たなかった。
■ オリコン「音楽のヒットを正確に伝える という弊社の使命」に照らして・・・」
オリコン・リサーチ株式会社は、1/28付のプレスリリースにて、MUSIC CARDの集計を除外するまでの経緯で「弊社としても「音楽のヒットを正確に伝える」という弊社の使命に照らして検証を継続してまいりました。」と語っている。
オリコンランキングを通じて「音楽のヒットが正確に伝わらなくなった」ことに対して、音楽ファン、ランキングの愛好者から失望・苦言が相次いでいた。今回の発表の中に盛り込まれた上記の文面からは、オリコン側が自らのランキングの本質を見失っておらず、音楽のヒットを伝えることに対して真摯に取り組もうとする姿勢が窺える。
■ 度を超えた商法には容赦しないという意志の表れか
プレスリリースでは、なおも次のように記されている。
今後も多様な販売方法が考案され、このような状況が広がる可能性は否定できないと考えられ、「音楽のヒットを正確に伝える」という弊社の使命に照らし、看過することはできないと判断するに至りました。
ミュージックカードの合算集計の終了について (オリコン・リサーチ株式会社)
この言葉からは、MUSIC CARDに限らず、「他の販売方法がたとえ生まれたとしても、今後は厳しく取り組んでいく」というオリコン側の意志を読み取れるのではないだろうか。
オリコンランキングに並ぶ売上枚数が「音楽のヒット」を示すというなら、その売上枚数が「音楽そのものの支持によって積み上げられた数字」を意味する必要があるだろう。そのためには、オリコン側が大なたを振るうことが必要不可欠である。今後も特典ありき・おまけありきが前提のランクインが繰り返されることが必至だが、既存の音楽ファン、ランキングの愛好者は、このような状況を改善するためのさらなる改革を強く求めている。
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