日本レコード協会が発表した2010年度の音楽配信実績が、前年の数字を下回ったことが分かった。前年割れは統計開始以来初めてである。NHKニュース、日本経済新聞がこの件について報じている。
音楽以外の趣味の多様化、普及が進むスマートフォンへの対応の遅れなどが、配信市場の成長ストップの理由として指摘されている。
■ 市場全体で前年比5%減
2010年の音楽配信売上実績は、全体で昨年に比べて5%減の859億9000万円。統計開始以来、初めて前年の数字を割り込んだ。
■ “ガラケー” 向けの「着うた」等配信実績が低下
低下の内訳は、従来の携帯電話(フィーチャーフォン、いわゆるガラパゴスケータイ)向けサービスが6%減の747億4500万円、スマートフォンを含んだパソコン向けのサービスは1%減の101億2300万円だった。この結果から、従来の携帯電話向けに配信される、いわゆる「着うた」「着うたフル」の配信実績が特に低下したことが分かる。
■ 急速に普及したスマートフォンへの対応が遅れる
配信実績低下の理由はいろいろ言われているが、その中でも「スマートフォンへの対応の遅れ」は大きな問題である。
2010年の携帯電話市場は、スマートフォンの普及が急速に進んだ点が、これまでとの大きな違いであった。その流れは年が明けても続いており、今現在の携帯電話販売ランキングでは、上位の多くをスマートフォンが占めている。こうした背景は、昨年以降にいわゆる「ガラケー」から「スマートフォン」への乗り換えが急速に進んだことを意味するものだ。
スマートフォンでは、「着うた」「着うたフル」などの、日本独自の音楽フォーマットを扱うサービスに未対応の場合が多い。従って、ガラケーのユーザとスマートフォンのユーザは、それぞれ異なる音楽配信サービスを利用することになる。
従って、これまで「着うた」「着うたフル」に主軸を置いていた音楽配信業者は、自社のユーザによるスマートフォンへの乗り換えが加速すればするほど、業績を落とすことが予想される。スマートフォンへの対応が遅れれば、各社の配信実績が徐々に低下し、音楽配信実績全体にも影響が出てくることになる。
2011年は、各配信事業者による「スマートフォン」普及への対応が、音楽配信市場再興の鍵を握ることになりそうだ。
関連サイト
・2010年 有料音楽配信売上実績(年間)(From 日本レコード協会)
・音楽配信市場 初めて前年割れ (From NHKニュース)
・音楽配信が初の減収 10年、携帯ゲームと競合激化 (From 日本経済新聞)
・王座は再び「GALAXY S」に——終わらないスマートフォンの上位争い (From ITMedia)
・次に買うケータイ、約半数が「スマートフォン」 (From ITMedia)
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よく音楽業界の低迷の原因に、音楽以外の趣味の多様化や不正コピー、最近ではyoutubeやニコニコ動画までやり玉に挙げられる始末ですが、それ以前の問題として、労働者の給与水準がここ10数年下がり続けているという実態を無視できません。
国税庁発表の「民間給与実態統計調査結果」を見ても、平成9年(467万円)以降の平均給与は下がる一方で平成21年には405万円ですから、12年間の間に60万円以上給与水準は下がっています。(ちなみに「平均給与」はボーナスも込みなので、ボーナス不支給の人はさらに低くなります)
こちらのブログでも紹介されていましたが、先に発表された日本レコード協会の2010年度「音楽メディアユーザ実態調査」でも、『新品のCDアルバムの購入枚数が昨年よりも減ったという851人に理由を尋ねたところ、最も多かったのは「金銭的な余裕が減った」で47.2%』という結果が出ていました。
こういう状況も背景にあるはずなのに、音楽業界の低迷が語られるときは、とかく冒頭に挙げたような理由が主な要因にされがちで、経済的な問題が取り上げられることはあまり
ないように思われます。本当は買いたくても経済的な理由で買えない人が増えているのではないでしょうか?
AKBが音楽業界のトレンドである現状では配信サービスが一時的に縮小するのは仕方がないかも。配信サービスには握手券つかないからね